昭和19年6月の戦時中へとタイムスリップしたテレビ脚本家・田宮太一とその家族が、過酷な戦争の時代をどう生き抜くかを描いた『ドラマ終わりに見た街』が21日に放送されました。
放送後には「トラウマ級のラスト」「平和ボケしているなか改めて考えさせてくれた」と多くの反響が寄せられています。
この記事では、多くの反響を呼んだ2024年版『終わりに見た街』のラストに触れながら、過去作品の最終回も併せて紹介します。
テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終わりに見た街』
1981年の山田太一さんの小説「終りに見た街」が3度目のドラマ化となった今回の作品は、2023年に他界された山田太一さんの意志を受け継ぎ、宮藤官九郎さんが脚本を手掛けられています。
テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終わりに見た街』あらすじ
主人公の田宮太一は、20年間細々と活動を続けているテレビ脚本家。家庭でも仕事でも孤立感を抱えつつもごくありふれた平穏な日常を暮らしていた。ある日、プロデューサーから「終戦80周年記念ドラマ」の脚本執筆を無理に引き受けさせられ、戦争を知らない彼は大量の資料に没頭する。しかし、寝落ちして目覚めたとき、家の外は見知らぬ森に包まれ、太一とその家族は昭和19年、太平洋戦争の真っただ中にタイムスリップしていた。
参照:テレビ朝日HPストーリー
『終わりに見た街』キャストと制作人の魅力
ドラマ『終わりに見た街』は、その緻密なストーリーと深い人間ドラマで視聴者を魅了しました。
豪華キャスト人の魅力
作品を彩る豪華俳優陣が注目を集めました。
- 大泉洋(田宮太一役)
コメディからシリアスまで幅広い演技力を持つ大泉洋。主人公・太一を演じ、現代から昭和へタイムスリップする中で、戸惑いや葛藤、成長を繊細かつ力強く表現。その演技力で物語の中心を支えています。 - 吉田羊(田宮ひかり役)
知的で落ち着いた雰囲気を持つ吉田羊。太一の妻・ひかりを演じ、家族を守る強さと優しさを兼ね備えた女性像を表現。時代の変化に適応しながらも、芯の強さを失わない演技が魅力です。 - 三田佳子(清子役)
ベテラン女優の三田佳子。太一の母・清子を演じ、認知症から記憶が蘇る複雑な役柄を巧みに表現。戦争体験者としての重みと、母親としての愛情を深く描き出しています。
ほか神木隆之介、西田敏行、橋爪功といった実力派俳優陣が特別出演することで、作品に深みや魅力を加えています。
宮藤官九郎の手腕
原作の魅力を活かしつつ、現代的な視点で描くことで新たな解釈を提供しています。シリアスなテーマながらも、ユーモアを交えた脚本が特徴で、視聴者に考えさせる要素が満載です。
戦争経験の有無が、僕と山田先生の大きな違いなのですが、それを逆手に取って、実感を伴わない主人公の「反戦」がこの苛烈な物語を通じて実感を帯びてゆくという大きな流れを意識して書きました。彼らに感情を乗せることで、戦争の愚かさを感じることができると出来ると思います。
(中略)いつもと違います。お楽しみに。
片山修の演出力
時代劇の経験を活かした演出が、俳優たちの魅力を引き出し、視聴者を惹きつけます。美しい映像と緻密な演出が相まって、物語の世界観がより一層引き立っています。
原作の世界観
「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎(りんご)たち」「早春スケッチブック」などのテレビドラマで知られる脚本家山田太一さんの原作が巧みに脚本化されており、現代社会へのメッセージが込められています。
脚本家、小説家として一時代を築き、ホームドラマの名手として家族をはじめ人間模様を丁寧に紡ぐ山田太一の作品のなかでも異彩を放つ本作。
引用元:テレビ朝日HP
後に山田太一さんは日経プラスワンのインタビューで「戦争体験を伝えるというのは、どう書いても昔話。今の人に自分のことのように見られる作品というと、今の人が昭和十九年に行くという設定以外に思いつかなかった」と語っています。
視聴者の反応はまさに山田太一さんの意図したとおりだったのではないでしょうか。
『終わりに見た街』トラウマ級のラストシーン分析
本ドラマの最大の話題となったラストシーンについて内容と視聴者の反応を踏まえて紹介していきます。
『終わりに見た街』衝撃なラストの詳細
タイムスリップを理解したあと、亡き父の戦友である小島敏夫と、その息子・新也が共にタイムスリップしていることを知った太一は終戦まで生き残るために協力することを決意します。
戦時中の東京で、戦争に関する資料と清子の記憶、日記帳を元に、空襲を避けながら生活していた太一は、これらを活かして3月10日の東京大空襲から住民を、空襲の被害がなかった上野公園に避難させるアイデアを思いつきます。
太一たちは大声で呼びかけ、多くの人々が救われるよう尽力していましたが、子どもたちは目の前で日本の勝利のために戦う人々に感化され日本の勝利を願うように。そんな子どもたちとの間に摩擦が生じ、喧嘩に発展する中、予期していなかった空襲が発生しました。
避難中に太一は憲兵の格好をした寺本を見かけて追いかけますが、全くの別人だったことに気づきます。その直後、太一の目の前で爆発が起こります。
目を覚ますと、太一は左腕を失っていました。目の前に瓦礫の山が広がるなか、寺本の配信が行われている画面のスマートフォンと東京タワーに見える建物に気づく太一。近くで焼け焦げた男に「今、何年ですか?」と尋ねますが、男は「にせん…にじゅう…」とだけ呟き、息を引き取ってしまいます。
混乱の中、太一は家族を思いながら命を落としてしまいます。
視聴者の反応と評価
それで「終わりに見た街」なのね…
— かえるさん (@mnva139) September 21, 2024
戦争から何も学ばないとこうなるかもよっていう山田太一先生からのメッセージかな。考えさせられちゃう。おもしろかった。
#終りに見た街
#終わりに見た街
— まるしょう (@marumarutyan2) September 21, 2024
なんか原作よりもラストがわけわからん感じが増えてゾワゾワする…
このタイミングでまたドラマ化して正解だと思う。
子どもたちの時代への染まり方は、この令和にいつ起こってもおかしくはないということ。その結末がまさしく、ラストの「終わりに見た街」なんでしょうね。
ラストシーンの怖さはもちろん、未来から来て戦争について情報として知っている子どもが戦時中の空気に染まってしまうことに印象を持った人も多かったようです。
『終わりに見た街』のラストシーンがトラウマ級と言われる理由
放送後のSNSには『トラウマ』というワードが並びました。
- 主人公の左腕が欠損してしまうこと
- 荒廃した街並み
- 焼け焦げた男性との会話
- 主人公の死
昨今のメディアでは明瞭に映像化されない部分が映し出され、衝撃的に感じる視聴者が多かったことがその理由だと考えられます。
終わりに見た街、見たけど…。
— いとたか@クローン病、聴覚障がい (@IBD1833155) September 21, 2024
この結末になるんなら、冒頭に「残酷な表現を含む為、精神に疾患のある方、心の弱い方、小学生以下のお子さんがおられるご家庭はチャンネルを変えることを強くお勧め致します。」的な注意書きは欲しかった。
それぐらい衝撃的なラストでした。…
あああ…終わりに見た街…クドカンだからどうにかこうにかハッピーエンドになると思っていたけど、胸糞展開だった…
— オカヤ (@nyamu4989) September 21, 2024
でも戦争ってそういうものだから、この終わり方できっと正解なんだろうな…
脚本家と主役の組み合わせから、最後はハッピーエンドだと予想していた視聴者も多かったようです。
原作と過去に放送された『終わりに見た街』ラストシーン
では、原作と過去に放送された2回のラストシーンはどうだったのでしょうか。
1981年発行原作のあらすじ
主人公一家は、近所の家族と共に昭和19年の終戦間近にタイムスリップしてしまう。彼らは終戦日を知っているため、それまでの生き残りを目指して必死に耐える。近所の不良息子はタイムスリップ後、突然無口になり、失踪。終戦直前、彼は帝国軍の軍服を着て帰還し、完全に戦時中の人間として変貌していた。父親を「非国民」と断じて襲いかかる彼に、周囲は混乱。突然の閃光と共に主人公が気づいたとき、世界は廃墟と化しており、崩壊した東京タワーが見える未来の光景が広がっていた。絶望の中、主人公は「今は何年なのか」と問い続けながら息絶える。
1982年放送『終わりに見た街』あらすじとラストシーン
「月曜ゴールデンドラマ」枠のスペシャル番組。平凡な一家が、ある日第二次大戦中の日本にタイムスリップする。戦時下の日本にあって、敗戦を知るはずの家族も次第に変容していく。淡々としたドラマのラストにショッキングなオチが待っている。
引用元:allcinema
第一回目の放送の際には、原爆投下の象徴であるきのこ雲が映されるシーンがあったようです。また、ラストシーンで主役の細川俊之さんの低音での語りが印象的だったというコメントもありました。
序盤見た。
— 環希碧位/かおす本舗 (@aoi_chaoshonpo) September 21, 2024
オチ見てから見ると確かに(唐突ではあるけど)話が繋がるわ。>終わりに見た街
ただ補完のために確認した一番最初のドラマ(1982年版)の方がよりオチが分かりやすい演出になっていて怖かった……これは当時まっさらな状態で見た人はトラウマになりますわ……
2005年放送『終わりに見た街』あらすじとラストシーン(終戦60年)
2005年9月の東京が舞台。システムエンジニアの清水要治は、家族と幸せに暮らしていたが、ある日突然、住んでいる場所が昭和19年にタイムスリップしてしまう。同じくタイムスリップした旧友の宮島敏夫親子と合流し、彼らは戦時下の生活に適応しつつも、未来から来た者として東京大空襲の危険を知らせようと試みる。しかし、住民は恐怖から避難を拒否。さらに、敏夫の息子・新也が軍人となり、彼らに敵対する。
その後、予期せぬ空襲が起こり、要治は負傷して目覚めると、そこは瓦礫と死体が広がる未来の東京だった。廃墟となったビルや東京タワーを目にした彼は、すでに原爆の爆心地となった「終わりに見た街」で命を落とす。
終わりに見た街は自分の中で一番なんじゃないかというくらいのトラウマ作品…(中井貴一版)
— 郁 (@308_hyhyde) September 20, 2024
ラストシーンは今でも覚えてる。小学生の自分にはほんとうに怖かった。
過去作品でも概ねのあらすじとラストシーンは同様だったようです。過去作品を見たことのある世代の人からは、比較しての感想も多くありました。
放送の度に話題になる本作品は、日本人にとって戦争が過去のものではないことに気づかせ、自分事として考えるきっかけを与えていることがわかります
まとめ
21日に放送されたテレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終わりに見た街』についてトラウマと呼ばれるラストシーンを過去作品と比較しながら紹介しました。
原作者は過去のインタビューで最初に戦争体験を子ども向けに書いて見ないかと言われた時、昔はこんなことがあったというような昔語りでは今の子どもは聞いてくれないだろうと思ったと語っています。
過去作品と比較することで、原作者が伝えたかったメッセージを制作人が丁寧に制作し、視聴者の心に強く印象付けられるドラマが受け継がれてることがわかりました。
⇒2024年9月21日に放送された『終わりに見た街』はTverで視聴できます。