SNSで話題沸騰中のアニメ『cocoon(コクーン)〜ある夏の少女たちより〜』。
ジブリ風の美しい映像と、戦争という重いテーマを繊細に描いた本作は、2025年8月15日(金)深夜24:35(=8月16日 0:35)にNHK総合で再放送されます。
この記事では、作品の背景や見どころ、視聴方法などを詳しくご紹介します。
ひめゆり学徒隊がモデルのジブリ風アニメとは?

本作の背景や、なぜ“cocoon”というタイトルなのかについても掘り下げてみましょう。
原作は今日マチ子の名作
物語は、戦時中の南の島を舞台に、学徒看護隊として戦場に赴く少女たちの日常と変化を静かに描いたものです。
本作の原作である『COCOON』は、2009年から2010年にかけて『Eleganceイブ』(秋田書店)で連載され、沖縄戦におけるひめゆり学徒隊から着想を得た物語として多くの読者の心を打ちました。
明確なセリフや説明に頼らず、構図や余白、淡々とした描写で観る人の心に問いかけてくる、まさに“読む人の心に問いかける”作品です。
2010年に文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品にも選ばれ、高い評価を受けています。
タイトル『cocoon(コクーン)』の意味

繭の中にいた彼女たちは、戦争によって否応なく外の世界に引き出され、変化を強いられていく。その変化と喪失を描く意味で、非常に象徴的なタイトルとなっています。
主人公の名前「マユ」「サン」もまた、「マユ(繭)=cocoon」「サン(蚕)」と呼応する形で設定されており、この作品全体に流れるテーマと深く結びついています。
“ジブリ風”と言われる理由は制作担当
『cocoon〜ある夏の少女たちより〜』が「ジブリ風」と称される理由は、制作陣にあります。
アニメーションプロデューサーを務めた舘野仁美さんはスタジオジブリ出身であり、現在舘野さんが代表を務める制作スタジオ・ササユリが『cocoon〜ある夏の少女たちより〜』のアニメーション制作を担当しているのです。
▶2025年5月28日発売の「装苑7月号」に「cocoon〜ある夏の少女たちより〜」のキャラクターたちについて、舘野仁美氏のインタビュー記事が掲載されています!
彼女が手がける作品は、柔らかく幻想的なビジュアルが特徴で、本作でもその繊細な空気感が映像と音で再現されています。
また、作画や色彩設計、音の使い方がジブリ作品を彷彿とさせる点も挙げられます。
爆発や流血といった戦争描写も、花びらが舞うような表現で置き換えられており、過酷な現実をそのまま突きつけるのではなく、少女たちの内面や感受性を通して描こうという意図が感じられます。
今回のアニメ化では、その繊細な空気感が映像と音で再現され、ジブリ作品のような柔らかく幻想的なビジュアルがSNSでも話題になっています。
AIでジブリ風なイラストがあふれる今、手描き中心でこのクオリティの新作アニメが見られることは本当に幸運
元ジブリ出身アニメーターさんが描いてるからジブリっぽさもあり、少しのシーンだけでも心を奪われる・・・
こうした背景からも、“ジブリ風”と称される所以が見えてきます。
ひめゆり学徒隊のアニメ映画はどこで見られる?

『cocoon〜ある夏の少女たちより〜』は、現在DVDやBlu-rayでの発売はなく、Netflix・Amazonプライム・U-NEXTなど配信サービスでの放送もありません。
見逃さないために、まずは放送スケジュールを確認しておきたいところですね。
地上波再放送は終戦記念日の深夜
アニメ『cocoon〜ある夏の少女たちより〜』は、2025年3月23日にNHK BSで先行放送されました。そして、地上波での再放送が決定しています。
- 放送局:NHK総合
- 放送日時:2025年8月15日(金)24:35〜(=8月16日 0:35〜)
終戦記念日に合わせたこのタイミングでの放送は、作品の持つメッセージ性とも強く結びついており幅広い世代への視聴が期待されています。
BS放送を見た人の感想
2025年3月のBS放送を見た人の感想がこちらです。
ジブリ風ひめゆりの塔だった。グロイ画面は一切見ずに戦争の悲惨さ、無慈悲、無意味さを再考させてくれる作品でした。
新しいけど、懐かしい。 昔はこんな心をギュッとする戦争アニメあったけど… アニメーションもよかった。
原作者の今日マチ子さんも、アニメ作品について「本当に素晴らしい作品で、こんな幸運が人生にあるんだな、と震えております」とコメントをされています。(出典:2025年4月1日X)
見逃し配信・DVD情報
ただし、NHKオンデマンドやNHK+(プラス)など、NHKの公式サービスでの見逃し配信が行われる可能性があります。放送終了後すぐのタイミングで、公式サイトや番組表をチェックするのが確実です。
声優・キャスト紹介
『cocoon〜ある夏の少女たちより〜』の声優陣・主なスタッフはこちらです。
- サン役:伊藤万理華さん(元乃木坂46)
- マユ役:満島ひかりさん
- 監督:伊奈透光さん
- 音楽:牛尾憲輔さん(映画『竜とそばかすの姫』など)
- アニメーション制作:スタジオ・ササユリ
- アニメーションプロデューサー:舘野仁美さん
主人公のサン役には元乃木坂46メンバーで女優としても活躍する伊藤万理華さんが起用されています。実力派女優として知られる満島ひかりさんとの掛け合いがどのような反応を産むか、期待が高まっています。
原作『cocoon』の魅力

今日マチ子さんの描く『cocoon』は、「戦争3部作」の第1作目として位置づけられています(他の2作品は『アノネ、』『ぱらいそ』)。
実際に沖縄戦に動員された“ひめゆり学徒隊”をモデルにしつつも、特定の個人や事実に固執せず、「少女たちの心のゆらぎ」「戦争に巻き込まれる理不尽さ」「日常の中の静かな崩壊」といった普遍的なテーマを掘り下げています。
『cocoon』は実話ではなく、舞台が沖縄とも明記されていません。
原作はセリフを最小限に抑え、余白や構図の妙によって物語を進行させる手法をとっており、今回のアニメもその精神を忠実に再現。視覚と聴覚に集中することで、見る人自身の心の中にさまざまな感情が呼び起こされる作品です。
▶原作『COCOON』(Amazon)
原作「cocoon」を読んだ人からは「ファンタジーが逆にリアルさを際立たせている」という感想が聞かれました。
今日マチ子『cocoon』読みました。
— misty (@misty882311) September 27, 2023
ひめゆりの塔をベースとしながらも、今日マチ子さんの本領はファンタジー(誇張したフィクション性)にある。
月並みな話だけど、フィクション性を織り交ぜることで翻ってリアリティが際立つ。
こんなにもキツい話なのに救われる。不思議でならない。 #漫画 pic.twitter.com/vc8pD3IBgP
今日マチ子『cocoon』読みました。
— misty (@misty882311) September 27, 2023
ひめゆりの塔をベースとしながらも、今日マチ子さんの本領はファンタジー(誇張したフィクション性)にある。
月並みな話だけど、フィクション性を織り交ぜることで翻ってリアリティが際立つ。
こんなにもキツい話なのに救われる。不思議でならない。 #漫画 pic.twitter.com/vc8pD3IBgP
ひめゆりの塔をベースとしながらも、今日マチ子さんの本領はファンタジー(誇張したフィクション性)にある。月並みな話だけど、フィクション性を織り交ぜることで翻ってリアリティが際立つ。
戦争を現在の視点から描き伝えることが大切だと思う。
沖縄ひめゆりの塔を元にした少女達の無垢なさと残忍さを可愛いイラストの絵で描かれたそれは、劇画よりもリアル。
ひめゆり学徒隊とは?
2校の愛称が「ひめゆり」であったことから、戦後、彼女たちは「ひめゆり学徒隊」と呼ばれるようになりました。
彼女たちは15歳〜19歳の年齢で、戦場(沖縄陸軍病院)に派遣され、看護業務(負傷兵の看護や治療の手伝いなど)に従事しました。なかには死体の処理など過酷な業務も含まれていました。
突然の解散命令で多くの犠牲者がうまれた
しかし、日本軍の敗色が濃厚となった1945年6月18日、突然学徒隊に解散命令が出されます。解散命令のあと、行き場を失った彼女たちの多くが激しい戦闘が続く沖縄南部を彷徨い、戦闘に巻き込まれ、動員された生徒・教師240人のうち136名が命を落としたといわれています。
戦後、最大の犠牲を出した伊原第三外科壕跡に慰霊塔である「ひめゆりの塔」が建立され、平和を願う象徴となっています。
また、1989年6月に「ひめゆり平和祈念資料館」が設立され、戦争の悲惨さと平和の尊さを後世に伝えています。
SNSには、ひめゆりの塔を訪れた人の作品に対する思いが綴られています。
NHK『cocoon ある夏の少女たちより』、これは沖縄戦80年を追悼するに相応しい良作。平和教材といってはなんだけど没入感と共感を呼ぶ。私が沖縄を初めて訪れたのは高校生時で、ひめゆりの塔と資料館、自分と同年代の少女たちがあまりに悲惨な末路を辿ったことに「怒り」を覚えたことは生涯忘れない。 pic.twitter.com/9IpfCarLsb
— 夷(ゑびす)@ユーフォ本通販中 (@ye_bi_su) March 31, 2025
これは沖縄戦80年を追悼するのに相応しい良作。(中略)自分と同世代の少女たちがあまりに悲惨な末路を辿ったことに「怒り」を覚えたことは生涯忘れない。
『ジブリ風のアニメ』としてSNSで話題に
アニメ『cocoon』の切り抜き映像は、現在YouTubeやTikTokなどのSNSでも広がっており、「これってジブリの新作?」「知らないけど泣きそうになった」といった声が上がっています。
知恵袋にも「ジブリ風のアニメで、ひめゆり学徒隊が出てくる映画の正体が知りたい」といった質問が寄せられるなど、多くの人がタイトルを知らずに映像の一部だけに触れて関心を寄せている状況です。

こうした自然発生的な口コミや切り抜きの拡散がきっかけとなり、これまでアニメや戦争作品に関心のなかった層にも届いていることは、この作品の静かな力を物語っています。

ChatGPTでも写真をジブリ風に画像生成するのが流行ってるよね
まとめ
この記事では、話題のジブリ風アニメ『cocoon〜ある夏の少女たちより〜』がいつどこで見られるのか、原作やキャスト情報、作品の魅力をご紹介しました。
『cocoon〜ある夏の少女たちより〜』は、派手な戦闘描写も、大きな感情の爆発もありません。しかしそれがリアルさを際立たせ、日常が崩れていく少女たちの心の揺れを通じて戦争の残酷さや命の重さを私たちに伝えてきます。
声にならない思いを、映像と音でじっくり描き出すこの作品は、まさに“今こそ見ておきたい”アニメです。
2025年8月15日のNHK総合での放送を、ぜひご覧になってみてください。

