「弁当を使う」という表現は現代ではあまり使われませんが、文学作品によく見られ意味を疑問に思う人も少なくありません。
結論から言うと、「弁当を使う」というのは「弁当を食べる」という意味なのですが、なぜ「食べる」ではなく「使う」という表現が使われるのでしょうか。
この記事では「弁当を使う」とは?という疑問に答え、その使い方について詳しく解説していきます。
「弁当を使う」とはどういう意味?「使う」=「食べる」
「弁当を使う(遣う)」の意味と「弁当」という言葉について解説します。
意味は「弁当を食べる」ということ
「弁当を使う」の意味は「弁当を食べる」ということです。
「使う」には、「それによって用を足すための行為をする」という意味があります。
「物などをある目的のために用いる」という方がイメージしやすいかもしれません。「箸を(食べるために)使う」などです。
つまり「弁当を使う」は
「それ=弁当」によっ「用を足す=お腹を満たす」「ための行為=食べる」ということ
なので、“弁当を食べる”という意味になるのです。
「弁当」は特定の言葉としても位置付けられている
上記のように、通常の使い方として要素に分けて考えることもできますが、「弁当」を特定の言葉とした解説もされています。
使う(読み)ツカウ
中略
7.特定の語と結びついて、それを用いての行為を表す。「弁当を―・う」「湯を―・う」
引用元:コトバンク
「弁当」や「湯」は特定の言葉とされており、これらの言葉と「使う」が結びつくことで(これを用いた)行為を表すようになります。
弁当を用いた行為=食べる
日本語は奥深いね~
「弁当を使う」の使い方|相手に敬意を払った言葉
「弁当を使う」は日常的に使用された表現で、平安時代から昭和の後期まで文学作品でもよく見られました。
「弁当を使う」はこのように使われました。
- 弁当を使うので縁先を貸してください
- ちょっとここらで弁当を使わせてください
行商や大工などが仕事先で使うことが多かったようです
きれいな日本語だなぁ。文学作品で使われるのわかるかも!
「食べる」ではなく「使う」とすることで敬意を表す
「弁当を食べる」ではなく「弁当を使う」と言ったのはどうしてでしょうか。
そこには相手を気遣う思いやりの心がありました。
「弁当を使う」という表現は、先ほど説明したように職人が仕事先の人などに遠慮して言う場合によく使われます。
そこで「食べる」という直接的な表現を避けて、「使う」という間接的な表現を用いることで、顧客である相手に敬意を払っていると考えられます。
「用意してきた」というニュアンスで誤解を防ぐ
この場合の『弁当』には”自分の家で用意してここまで持ってきたもの”というニュアンスが加わります。
だから食べのものなかでも「弁当」だけに使うんだね!
「弁当(を使う)」の語源・歴史
「弁当を使う」はいつごろ使われていたのでしょうか。
- 「弁当」の語源は中国に由来する
- 「弁当を使う」の起源は室町時代または戦国時代まで遡ることができる
- 「弁当を使う」は明治から昭和後期までの文学作品でよく使われている
「弁当」という言葉は中国からやってきた
「弁当」という言葉は中国の宋代に生まれた「便當(べんとう)」という言葉が元となっています。
現代のように「携行に便利な食物(およびその容器)」という意味で使われるようになったのは比較的最近のことです。
文学作品から歴史をひも解く
明治から昭和後期までの文学作品には「弁当を使う(遣う)」という表現がよく使用されています。
- 「加沢記」江戸時代初期
「便当を取り出させ休息し給いし所に」 - 「唐茄子屋政談」落語家・古今亭志ん生(5代目)
「弁当使わせて頂いて宜しうございますか。」 - 「銀の匙」1912年(大正元年)中勘助著
「弁当を使ってたのを」
など
『弁当』には警察や刑務所に関連する隠語の意味がある
『弁当』には、直接的な意味だけでなく、隠語としての使われ方もあります。
警察での隠語
警察で「弁当を持つ」は『逮捕状や拘束命令を持参する』こと
〈由来〉
弁当・・・持ち歩き、食べたらなくなってしまう
執行猶予・・・ 猶予期間や釈放後もついてまわり、(期間中に)犯罪を犯したら なくなってしまう
というところからきていると言われています。
刑務所での隠語
刑務所で「弁当」は『服役期間』のこと
〈由来〉
刑務所内で提供される食事が「弁当形式」であることが関係しているとされています。
1弁・・・服役1年
2弁・・・服役2年
『弁当』にはそんな意味も隠されていたんだ!
まとめ
この記事では「弁当を使う」という表現について意味や使い方について詳しく解説しました。
- 「弁当を食べる」という意味
- 行商や大工などが仕事先で使うことが多かった
- 「用意してきたもの」というニュアンスで誤解を防ぐ意味でもある
- 明治から昭和後期までの文学作品でよく使われている
- 「弁当」は特定の職種内での隠語でもある
他人を思いやるきれいな日本語としてぜひ覚えておきたいです。